先日のコラムで紹介した天皇賞は歴史に残る、記憶に残るレースとなった。どの出走馬が勝ってもおかしくない史上稀に見る豪華メンバーで開催された第138回天皇賞秋。その中でも三強と言われる昨年の最優秀3歳牝馬ダイワスカーレットを筆頭に、昨年64年ぶりの牝馬によるダービー制覇の快挙を成し遂げたウォッカ、今年の3歳世代最強馬ディープスカイに注目が集まった。

レースを観た人なら分かるだろうが、今年一番の名勝負と言われてもおかしくないものだった。名勝負といえば野球やサッカー、相撲などどんな世界にも存在する。それは競馬界においても例外ではない。かつてライバルとして多くのファンを沸かせたテンポイントとトウショウボーイ、ナリタブライアンとマヤノトップガンの一騎打ち…言い出すとキリがないくらい名勝負が存在する。今年の天皇賞秋もその一つとなるだろう。ゴールを駆け抜けた瞬間、誰にも勝った馬がどの馬なのか分からなかった。それは騎乗していたジョッキーでさえも例外ではない。結果はウォッカとダイワスカーレットがほぼ同時にゴールを通過していた。ディープスカイは二頭からほんの少し、頭差だけ離されていた。どちらが勝ったのかを判定するには写真が用いられる。この写真判定は通常なら長くても5分ほどだが、今回は13分も判定に時間を要した。結局ハナ差でウォッカに軍配があがる。写真を見ると本当にハナ差である。鼻先差といってもいいほどである。わずか2p差だった。勝ったウォッカに騎乗していた武豊騎手は「結果が出るまで生きた心地がしなかった」とインタビューで語る。今年は成績不振と言われなかなか大きなレースに勝てなかった武豊だったが、やはり天才。名騎乗で勝つべきところはきちんと制した。

レース前までこの三強を不安視する声もたくさんあった。ダイワスカーレットは七ヶ月の休養明け、ウォッカは2000mという距離不安、ディープスカイは古馬との初対戦。それぞれに死角はあったが、それらすべてを一蹴するかのような闘いだった。

競馬には夢がある。それはギャンブルという一攫千金を手に入れるための夢ばかりではない。野球やサッカーなどが好きな人は、自分の好きなチームや選手を熱烈に応援する。競馬もまたそれと同じなのだ。好きな馬、応援したい馬が必ずいる。その馬の姿を自分に置き換えて、頑張る馬を見て自分も頑張ろうという気になる。勇気をもらうことはもちろん、感動のあまり涙することさえもある。

よく競馬は血のドラマだと言われる。かつて活躍していた馬の子どもたちが走り、いずれ孫の代までいく。ウォッカとダイワスカーレットの父もそれぞれ名馬であった。牡馬にも勝る牝馬、名牝と言われてもおかしくない彼女たちの子どもがいずれ同じ舞台に立ち、闘う日がいつか来るかもしれない。名馬は名馬から。血は脈々と受け継がれていく。



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